惜しい!誰か他の作家が書き直したら最高に面白くなりそう『滅びの園』(恒川光太郎)

レベル3級(読書中級者向けの本)

この本は、読書レベルで言うと「3級 読書中級者向け」の本です
本の楽しさがちょっと分かってきた人におすすめのレベル。もちろん読書好きの人にも楽しめる本です。
「自分がどの読書レベルなのか」をチェックしたい人はこちらから

ほんとに上から目線のタイトルですみません。でも、個人的に「どうして!?どうしてそんな書き方するの!もっと面白くなるのに!!!」と最高に悔しかったのが、恒川光太郎の小説『滅びの園』ですレビューや感想を知りたい人はチェック!(ネタバレなしです)。

文章の読みやすさ  ★★★★
キャラクターのよさ ★★
先を読みたくなる度 ★★★★★
スッキリ爽快度   ★★
エロ度       ★

この記事で紹介しているのは、この本です↓

『滅びの園』のあらすじに期待感が高まるが…

この『滅びの園』は、2つの軸でストーリーが進みます。一つは、地球で増殖する未知の生物「プーニー」と人間との戦い。もう1つは、プーニーの元凶である「未知なるもの」という世界を破壊する戦い。(という解釈をしたけど、合ってるかな?)
この2つの軸が並行して進み、最後にストーリーが合体して、最終戦闘に入るという流れです。これだけ聞くと、もうすごい楽しそうで期待感しかない!頭に浮かぶのは、激闘に別れのシーン、パニック感・緊張感、そして怒涛のクライマックス!否が応でも想像してしまう!

ブック船長
ブック船長

個人的に大好きなSF大作『新世界より』のような期待感を持ってしまったのが、すべての始まりでした…。

ちなみに私は、SF小説を普段はあまり読まないので、細かい論理的なつじつまが合っていなくても、特に気にしないタイプです。
SF小説の名作と言えばこれ「新世界より」↓アニメ化もされました。もう、最高すぎるでしょ…。読書上級者向けの本です。

最初の1章はほぼ飛ばし読み!退屈でつらい

滅びの園の表紙と感想レビュー
ハードカバーの表紙はきれいで幻想的。全部で314ページあるので、けっこうボリュームがある。

最初の1章は、ブラック企業に勤めるサラリーマン・鈴上誠一が、電車からファンタジー世界にトリップするシーンです。私はすでにそこで脱落しそうになりました(笑)
滅びの園」でのファンタジー世界は、桃源郷のようにのどかで住人も親切で、絵本のような世界。それは別にいいんですけど、え、ファンタジー世界への入り方、雑じゃない?ということ。SFやファンタジーを読み慣れていない人間にとっては、いきなり別世界にトリップしても、頭がついていかないんですよ
第1章の主人公・鈴上が別世界に入ってすぐ、住む家を見つけたときのシーンがこれ。最初のセリフは、鈴上の質問。

「家主さんは」
「もとは魔女が住んでいたんだよね。で、その魔女はいなくなっちゃったんで、空き家になったんだ。家主さんはいない」
魔女?
「その魔女はどこにいったんですか?」
「さあ?西の海の先に飛んでいった。箒に乗ってね。魔女は気まぐれだし、不動産の所有権に対する意識がないんで、勝手に住んでいて大丈夫だよ」
「戻ってきません?」
「きたって平気だよ。空き家はたくさんあるし、魔女だって引っ越した後に誰かが住むことは想定しているだろうし」

『滅びの園』恒川光太郎 より引用

つい最近までブラック企業に勤めていて電車に揺られていたサラリーマンが、いきなり「魔女」の話とか受け入れるの!?
鈴上は記憶喪失でまったく知らない場所に来たと思い込んでいますが、それにしては危機感がなくて物語に入っていけませんでした。ま、ぐだぐだ説明ナシに異世界に飛ぶ方がテンポがいいと言う人もいるかもしれませんが。

ブック船長
ブック船長

私は、作者の恒川光太郎さんという作家の本を読んだのはこれが初めてだったのであ~あ、ハズレだったか…」と早くも挫折しかけました。

第2章からは入りやすく、後半になるとページをめくる手が止まらない

滅びの園の章タイトル
章は全部で6つに分かれている。一番好きなのは第五章「空を見上げ、祝杯をあげよう。」

第2章はがらっと雰囲気が変わって中学生の女の子・聖子(古風!)の視点になるので、内容も頭に入りやすくなります。で、平和な学校生活から、だんだんとプーニーが増殖していくじわじわ不穏な空気がたまらない!ここにきてようやく私も「面白そう!ちゃんと読もう」とじっくり読み始めました。

ブック船長
ブック船長

個人的に一番好きなポイントは、人それぞれにプーニー耐性が違う、というところ。分かりやすくしたのはこれです↓

【D耐性】抵抗値0~10:プーニーが近くにいる環境では、体が拒否反応を起こして死に至る
【C耐性】抵抗値11~80:プーニーが近くにいる環境では、1年以内に精神面、肉体面に影響がある
【B耐性】抵抗値81~200:プーニーの多い環境にいて、1年以内なら特に精神面、肉体面に大幅な影響はないと考えられる
【A耐性】抵抗値201以上:強い耐性を持ち、プーニー比率の高い地域で長期的に生存できると考えられる

ここで、2章の主人公・聖子の抵抗値は、なんと470なんです。ずばぬけてます。この後の第3章や4章でも、聖子のように、きわめて高いプーニー耐性を持った人間が2人出てきます。先天的に圧倒的な能力を持った彼らがどう戦うのか、どう生きるのか、という展開が見ごたえがあります。
2章の終わりごろになると、もう続きが気になって仕方ない!ここから買えます↓

最大の欠点&残念なところは、緊迫感のなさ

この『滅びの園』、ラストもけっこう好きです。余韻が残るというか、ずっしりと重たい感じで、せつなくて、あとに残る小説。
でもだからこそ、途中の、気の抜けた文章・会話がすごく残念すぎる!たとえば第二章で聖子が、プーニーのせいで死ぬ運命にある女性「山田さんの妻」を置き去りにするシーン。

慰めの言葉など、逆に白々しく偽善的で、不謹慎。期待をもたせる嘘のほうが罪のある言葉として響く。
「よかったよかった。今生き残っているのは何人?」
「七人です」私はいう。「山田さん、えっと、旦那さんも生きています」
「そっかあ。あんたも若いのにかわいそうに。嫌な時代に生まれちゃったね」
いや別に私のことはいいってば。
「あ、あの」私はいった。「なにか、お手紙とか、あれば、渡しますけど」
「ないない」その人は顔の前で手をふった。
「伝言とかは?」
「じゃ、みんなに、ばいば~いって伝えて。あ、あと私の亭主に、最後のお別れとかこないでいいっていっといて。耐性ないから」

『滅びの園』恒川光太郎 p122より抜粋

なんか、死ぬ方にも救う方にも緊張感がなくて、色んなシーンで「え、そんなあっさり終わっちゃうの?」と思います。おしい、とにかくおしい。
別にお涙頂戴的な物語が読みたいわけじゃないんですが、盛り上がりそうな、火がつきそうなポイントがそこここにあるのに、作者自ら足で踏んで火を消しているイメージ。作者としては、感動シーンよりも、淡々と人類の戦いを描きたいのかもしれません。
でもなあ~もう少し、盛り上げてほしかったな~!!残念ですが、でも普通に面白かった小説でした。文章も簡単で読みやすいのですが、章ごとにころころ視点が変わったりと読みづらい部分もあるので、読書中級者以上におすすめの本です↓


ちなみに恒川光太郎といえば、この『夜市』が有名です↓

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