「わ~久しぶりに、好みどストライクの小説がきた~!!」と個人的にテンションが上がったのが『あと少し、もう少し』。女性作家・瀬尾まいこの、少年たちの駅伝小説です。レビューや感想が気になる人はチェック!ネタバレ無しです。
文章の読みやすさ ★★★★★
キャラクターのよさ ★★★★★
先を読みたくなる度 ★★★
スッキリ爽快度 ★★★★
エロ度
この記事で紹介しているのは、この本です↓文庫版の表紙は、大人っぽいイラスト。
読んで数ページで「あ、好き!面白くなる!」の予感

私の個人的な好みとして「主人公や周りのキャラクター重視」という基準があります。登場人物の性格が面白かったり共感できたりすると、圧倒的に物語に入り込みやすいです。その面でいうと、この『あと少し、もう少し』はもうダントツで、駅伝を走る少年たちキャラがよい!
「やってもできない」それが表に出てしまうことを、俺はずっと避けてきた。できそうにない問題にぶつかると、できないと証明される前に投げ出した。そのうち投げ出すことに慣れてきて、ちょっとしたハードルでも俺は手を出そうとしなくなった。そして、その分、できないことも増えていった。
『あと少し、もう少し』瀬尾まいこ より引用
最初の難関は分数だった。通分だの割り算の時にはひっくり返すだの、ルールがごちゃごちゃでわけがわからない。そもそも1に満たない数があることが理解できなかった。だからやるのをやめた。馬鹿だと思われる前に、算数から手を引いた。
けっこうしんみりした一人語りで始まると思ったら「分数につまずく」というのが、子どもっぽくて本当に笑えます。ツッパリ不良キャラの大田、脇キャラなのに存在感あってすごく好き。
そして、他のサブキャラ「設楽」の描写はこれ。
僕は、小学校低学年からランクが常に最下層だった。身体は無駄にでかいくせに、声は小さくしゃべればどもる。それだけでいじめてくれという雰囲気が漂っているのに、ついでに名前は設楽亀吉だ。おじいちゃんがつけた名前だけど、今の世の中を亀吉で生きていくのは至難の技だ。
『あと少し、もう少し』瀬尾まいこ から引用
色んな登場人物が出てきますが、いじめられっ子ですら基本の性格の部分に笑いがあり、シリアスな部分はありません。
ついでに、美術部からいきなり陸上部の顧問になった、ダメダメな教師「上原先生」とのやりとりも。
「だったら、先生は何ができるの?」
『あと少し、もう少し』瀬尾まいこ より引用
「へ?」
「美術以外に何ができるの?野球だったらやれるの?バスケだったらやれるの?」
「どっちも無理だけど」
そりゃそうだろう。ボールを触ったら突き指しそうだし、上原にバスケや野球のルールなんて理解できそうにない。
「きっと、先生、他のクラブ持ってても同じだよ」
「そっか」
「とにかく生徒の前で泣くのはやめてくれない?教師が泣いていいのは卒業式だけです」
「うん、そうだね。あ、でも私泣いてはないんだ。これ、花粉症だから」
陸上の駅伝物語って言ったら、ただ本番を走っているだけか、練習で追い込んでいるか、部員たちの衝突があるか、みたいなイメージですが、日常生活のやりとりも面白くて読めるのが魅力です。
陸上の駅伝シーンも胸が熱くなる!

もちろん、本番の駅伝シーンも、すごくいい!色んな思いをこめて走るそれぞれの少年たちが光って見えます。中学・高校の部活で運動部に入っていた人は特にぐっときそう。
私は陸上のタイムとか走るペースとか専門的なことは分かりませんが、主人公の少年たちの気持ちがメインなのでどんどんシーンが頭に入ってきて、胸が熱くなって何度も泣きました。
ネタばれにならない程度に、物語の最初の方の文だけを引用します。
初めて駅伝を走った時、僕は心底驚いた。この僕が、みんなから励ましやねぎらいの言葉を送られているのだ。もし僕が駅伝を走っていなかったら、陸上部に入っていなかったら、誰かに応援されることなどなかったはずだ。がんばれという言葉が、僕にはよく響く。ありきたりの言葉がありがたいということを、僕はここにいる誰よりも知っている。
『あと少し、もう少し』瀬尾まいこ より引用
とにかく明るい気分で読書をしたい人におすすめ
この小説は、「とにかく元気が出る本が読みたい」「ほのぼの癒されたい」という人におすすめ。文章のベースに明るさや脱力感がある感じが、著者の瀬戸まいこの魅力です。テンポがよく文体も軽いのでさくさく読めて、ところどころくすっと笑えて、感動して。個人的にパーフェクトに近い小説、といったら言いすぎかな…(笑)。
これまで、青春の駅伝小説といえば、三浦しをんの『風が強く吹いている』が好きでしたが、個人的にはそれに並ぶか少し上回るくらい『あと少し、もう少し』がおすすめです。
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ちなみに、駅伝小説はこちらもおすすめ↓大学生たちの物語です。
「風は強く吹いている」は小出恵介や林遣都で映像化もされています↓
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